天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
〜翠side〜

律の家に泊まってから数日後、私は仕事で遣いを頼まれ駅までやってきた。
一度化粧室へと向かう。

鏡の前でメイクを軽く直していると、一人の同い年くらいのとても綺麗な女性がキャリーバッグを引いて慌てて入ってきたかと思えば床にしゃがんで何やら必死に何かを探している。

「なにかお困りですか？」

私はその女性に近づいて声をかけた。

「え？　あ、えっと…、ピアスを落としてしまったみたいで…」

彼女はそう言って涙を目にたくさん浮かべて答えた。
声がとても綺麗だ。

きっと大事な物なのだろう。

「一緒に探します」

彼女の片方の耳に付いたピアスをチラッと見る。
シンプルなダイヤのピアスだ。

そしてしばらく探しているとキラッと床が光った気がして近づいてみる。

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