天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「あった! ありましたよ! ほら! これ!」

私はハンカチにそっとピアスを乗せて拭く。

「あ、汚れちゃいますから…」

「そんなの気にしないでください!」

そう言って笑えば彼女は目を大きく開けたあと微笑んでくれた。

かっわよ!
しかもやっぱり綺麗な声だ。

「ありがとうございます。とても大事なものだったから…」

彼女はとても大事そうにピアスを握りしめた。

「これ、幼馴染にもらったものなの」

幼馴染?

「そうなんですね。プレゼントですか?」

「ええ」

口元に優しく笑みを浮かべるその横顔はとても綺麗で、どこか儚さを感じるそんな表情にも見えた。
何かあったのかな?

「よかったですね、見つかって」

すると彼女は私を見てまた微笑む。

「あなたみたいに心も綺麗で優しい人なら諦めもつくのに…」

ん?
なんの事だ?
と、とりあえず笑っておこう。
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