天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そしてチラッと時計を見れば彼女も見たようで慌てて立ち上がる。
「いけない! ごめんなさい! 私行かないと! エアポートのバス停ってどこか分かりますか?」
え?
「案内しますよ! 何時のですか?」
「14時…」
え!?
もうすぐじゃん!
「ほら! それ私が待ちますから! 走れます?」
彼女はコクコクと頷いたのでキャリーケースを横取りして私はぐいぐい乗り場まで彼女を連れて行く。
「良かった! 間に合いましたよ!」
振り向けば彼女はぜいぜい息を切らしていた。
「あはは! ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫っ。お、おかげで間に合いました。ピ、ピアスも何から何までありがとうございました。何かお礼を…」
その時バスのブザーが鳴る。