天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
コンサート当日、ホテルの部屋で準備を整える。

昨日ゴリ押しされたドレスを着て、メイクをしていく。

髪型どうしようかな。
背中開いてるし下そうか。

そして髪をセンターで分けて、大きめに巻いていく。

最後に深い赤のリップを塗る。

ははは。
初めて律にぶつかった時もこのリップだったな。

そしてドレスに合わせて買ったファーのコートを羽織り、ヒールを履く。

今日は靴ずれしませんように。
律におぶってもらった日のことを思い出した。

あの時はまだ、私をただの追っかけだと思ってたんだよね。
なのに助けてくれた。

優しいよね、やっぱり。

そしてタクシーで会場まで向かい、指定席へと向かった。

あ、もう来てる!

「こんばんは」

私は昨日の老夫婦に声をかけた。

「あら! スイ? なんて綺麗なの!?」

「こりゃ驚いた」

「ふふふ。ありがとう」

私は二人の隣に座る。
てかここの席めちゃくちゃ近いじゃん。
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