天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そして間も無くするとオーケストラの団員達がゾロゾロとやってきた。

ふふふ。
この感じ久しぶりだ。

すると私の席の少し前の方に見た事のある顔を発見した。

嘘!?
あの時の彼女だ!

うわ。今日も綺麗。
しっかりとドレスアップしてる。

そして会場から大きな拍手と共に律が颯爽と現れた。

ドクンと大きく心臓が脈打つ。

とても集中している顔だ。
今ならわかる。

指揮者と笑顔で握手を交わし、お辞儀をすると燕尾服の裾をなびかせ椅子に座った。

そしてふと前に座る彼女の横顔を見ると、目を輝かせて律をジッと見つめていた。

それは愛おしそうに。

あの顔知ってる。
丈慈の奥さんの天音や、美空、維織もああいう顔をする。
絃の彼女の那智も。

恋してる顔だ。




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