天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
翌朝目が覚めて、ぐっと背伸びをする。

珍しく沈んだ心でもこうして朝はやってくる。
帰るのは予定通り明日にして、今日もせっかくなので観光しよう。

ーーーー

「え…」

「あ!」

何でよー。
今私の目の前には、あの彼女がいてバッチリ目が合ってしまった上に指まで指されている。

「あー、こんにちは」

とりあえず微笑む。

「こんにちは! すごい偶然ですね! あの時は本当に助かりました!」

「それは良かったです」

「あの、お礼にランチご馳走させて下さい!」

げ!

「あ、いや…」

「こっちに美味しいお店があるの!」

そう言って彼女は私の腕にしがみつくようにホールドしてグイグイ引っ張られる。

あかーん!

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