天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そしてそのままなす術もなくレストランに連れて行かれる。

「私、真弓って言います」

「えっと…翠です」

すると彼女はニコッと笑った。
かわいいー。

「翠さん…。翠さんは何しにここに？」

「か、観光です」

とりあえずそう言っておこう。

「観光？　ふふふ。そうなの。これも何かのご縁だし連絡先交換しましょう！」

そう言ってニッコニコで言われる。

「あの、私携帯日本に忘れてきちゃって。あははは」

すると目を大きく開ける真弓さん。
そりゃ驚くわな。

「ふふふ。なるほど。それじゃこれだけ」

そう言って名刺を渡された。

声楽家…
え？
歌手って事？

真弓さんは携帯を出して何か操作している。

「真弓さんは、歌手なんですか？」

「そうなの！　翠さんに会った時も日本公演があってそれの帰りだったのよ！　嬉しい！　翠さんに会えて！　良かったあなたで！」

ちょっと最後は意味わからんけど、とりあえず笑っておく。

「翠さんは、美人で綺麗だし、心もとても綺麗よね」

いやいや褒めすぎ。

「そんな、真弓さんの声だって本当に綺麗だと思ってたから、歌手なら納得です。とっても可愛らしいし」

そりゃ律も放っておかないわ。
私とは真逆で可愛らしい雰囲気でさ。

心が沈んでいく。
いけないいけない。

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