天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「それで、彼女とは連絡取れたのか?」
大和に聞かれる。
「え? どういう事?」
真弓が俺を見る。
「いや、昨日から翠と連絡が取れないんだよ。今も電話に出ないんだ」
「そうなの? でもここに来てるのよね?」
「ああ。お前が座っていた少し後ろの方にいた」
会いに来たわけじゃないのか?
「律、私相手がこの人なら諦めがついたわ。完敗よ。本当に素敵な人だったもの。私とは見た目も性格も正反対よね、ふふふ。律の好みがわかった気がする」
そう言って笑った。
「いや…まぁ。そうだな」
諦めがついたなら良かったよ。
そして、翠に何度か連絡するもやっぱり出ない。
とりあえず真弓をタクシーへと乗せて見送ったその時、連絡が取れないままだった翠が俺を驚いた表情をして見ていた。
「翠?」
目が合う。
翠は俺を見て唖然としている。
と思いきや、今度は何故か踵を返し走り出した。
なんで!?
「翠!」
俺はすぐに追いかけ捕まえた。