天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
"この女、どうせいつもの追っかけだろ?"

追っかけ?
いや、今日初めて来たんですけど。

そして私を氷点下の眼差しでもう一度見下ろす。

"君みたいに、わざと待ち伏せしてぶつかってくるような女には懲り懲りだ"

"そんなドレスを着て色仕掛けでもするつもりか?"

はぁー?

「さっさと道を開けてくれないか。邪魔だ。君みたいな女には興味が無い」

今度は日本語でそう冷たく言い放たれた。

なにこの人!
性格悪すぎないか!?

"ぶつかったのは申し訳なかったわ。ごめんなさい。でも見ず知らずのあなたにそこまで言われる筋合いはないわ。その辺の女と一緒にしないで"

そうドイツ語で言い返し、私は財布から一万円札を五枚突きつけその場を立ち去った。

腹立つわー。
何あれ!

本当に同じ人?
別人じゃないの?

ごめんなさいね!
口紅付けて!
ったく!

あんな扱い受けたの初めてだわ。
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