天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
俺は咄嗟の事で頭が回らず、放心してしまう。

は?
さよなら?
さよならって何?

おやすみでもなく、さよならって言ったよな?

連絡を無視し続けるのは、俺にわざわざ別れを告げるためにここに来たという事なのか?

いや、そもそも何で急に?

やっと大和に声をかけられて我に返りとりあえずホテルに戻る。

ホテルに戻ってからもやっぱり翠からの連絡はない。
俺も何度も電話するも応答しないうえに、しまいには電源を切られてしまった。

一体どうなってる。

すると一部始終を見ていた大和から連絡が来る。

「はい」

『大丈夫か? 連絡取れた?』

「あ? 大丈夫ではないな。電源切られたわ」

『あのさ、俺思ったんだけど、タイミング的に勘違いされたんじゃねぇの? 真弓の事』

真弓?
言われてみれば…そうだ。
あの時俺は真弓をエスコートしてタクシーに乗せたあと、驚いた顔をした翠と目が合ったんだ。

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