天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「でも私…付き合ってって言われてない…」
俺はそう言われ、前に大和に言われた事を今更思い出した。
日本人が交際するときは付き合おうと言わないとだめらしいと言っていた事を。
てっきり翠には伝わってるものだとばかり思っていた。
ちゃんと好きだとも言っていたし。
こんな所で文化の違いを味わうことになるなんて。
にしたって、なんで真弓と付き合ってるなんて勘違いするんだ?
「真弓はなんででてきた?」
「え…だって幼馴染なんでしょ?」
ん?
真弓に聞いたのか?
「ああ。幼馴染だよ」
「だから…」
だからなんだ?
「幼馴染だけど、俺は真弓に対してそれ以外の感情を抱いた事はない。前に告白されたけど、ハッキリと断ったし」
「え…」
「真弓も言ってた。相手が翠なら納得だって。だから今日だって俺が翠と連絡が取れないと言っていたから、教えてくれたんだ」
「そんな…」
翠の瞳が大きく揺れて動揺しているのが伝わってくる。