天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


俺はそっと翠を引き寄せる。

「翠。どうしてウィーンに来たんだ?」

「それは…」

「言って。ちゃんと」

「私も付き合ってると思ってたんだけど、よくよく思い返したら付き合おうって言われてない事に気がついて…。だから付き合ってるのか確かめたくて、居ても立っても居られなくなって…それで…来ちゃった」

おいおい。
なんだよそれ。
めちゃくちゃかわいいな。

「連絡くれれば良かったのに」

「だって、こんな大事な事…。顔見て確認したかったし」

それもそうか。

「それに、律の仕事の邪魔もしたくなかったから…」

俺に気を使ってたのか…。
あんまり連絡とれないと言っていただけに不安にさせてしまった。

「チケットは? 買えたのか?」

わりと早い段階で売り切れてたはずだよな?
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