天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「も、もらったの。たまたま」
「もらった?」
翠はコクっと頷くと話し出した。
とりあえず観光していて、困ってる老夫婦に声をかけて助けたらお礼にとチケットをもらったと。
はぁ。
本当にコイツは…
真弓もそうだったし、前のお好み焼きのスタッフにだって。
困ってる人を放っておけないんだもんな。
そういう所が翠らしいというか。
愛おしいと思う。
「さすが俺の彼女だ」
「律の彼女…」
「ああ。翠は俺の彼女だよ。俺は初めて抱いたあの日からずっとそう思って一緒にいた。付き合おうって言葉がなくて悪かった」
そう言って抱きしめた。
「律っ…ごめんね。さよならなんて言って…まだやり直せる?」
「当たり前だろ。やり直すも何も、終わしたつもりはない。翠が暴走してるのくらいわかってた」