天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


「いえ、こちらこそ」

そう言って名刺をちゃっかり交換する二人。

その間もママは叫びたいのを我慢してフガフガ言いそうになっている。

「ママ、落ち着いて! またゆっくり会おう? 外じゃ目立つしさ」

チラチラと道ゆく人がこちらを気にして過ぎ去っていく。

「そ、それもそうね! それじゃ仲良くね! 律くん、翠お転婆だけどよろしくね?」

ちょ、ママー!

「ははは。そこが翠さんの良いところですから」

律はそう言って笑って見せた。

目を大きく開けたあと、ポッとわかりやすく顔を赤くするママを見てパパが苦笑いを見せる。

「律くん。麗は渡さないよ」

そう言ってパパはママを引き寄せる。

「やだ純平!」

こんな所でいちゃいちゃしないでくれー。

「ははは。律くん、翠の事頼んだよ。くれぐれも悲しませ

「パパ!」

パパの過保護がこんな時に発揮される。
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