天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
向かう先はタヒチ島からフライトで50分のボラボラ島。

古くから語り継がれるポリネシア神話の舞台でもあるスピリチュアルな小島の入江にプライベート感満載な隠れ家リゾートに泊まる。

空港と同じ施設に船乗り場があって、専用フェリーでいざ出発。

火山の噴火で沈下したところに透き通った海水が流れ込んでできたラグーンに囲まれた風景はとても神秘的だ。
この自然が作り出した芸術作品のような絶景に言葉も出ない。

律と黙ったまま風を感じながら海に揺られる事およそ20分。

待ち受けていたのはリゾートの玄関口である水上ラウンジ。

まるで楽園に上陸するみたいで心躍る。

「ふふふ! すごい!」

「はは。そうだな、ほら」

そう言って律が私の手を引いて歩く。
大きな手。

そして夢の世界のように感じる非日常感に、私は興奮しっぱなしだ。

「翠、落ち着け」

フッと笑われる。
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