天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「ピアノ弾いていい?」

「ん? いいよ」

この部屋には四角いピアノが置いてあった。
たまたまなのか、あるからここを選んだのかはわからない。

律はピアノの前に座ると、ゆっくりとしっとりと弾き始めた。

一瞬で惹きつけられる。

軽やかに、それでいて深いようなそんな音色で、鍵盤を弾く指を見て思わず鳥肌が立つ。

私はそっと脚を組んだ。

律を見ると目を閉じて音に酔いしれるように弾いている。
いつも思うけど、よく目閉じたまま弾けるよね。

律は下だけ履いて上半身裸で次々と音色を響かせる。
律の艶々として、大きな背中に飛びついてしまいたくなる。

私はそっと窓際に移動して律が奏でる音色を聴きながら外を見る。
なんだかこれ以上あんな姿を見てたら変な気起こしそうだ。

すっかり暗くなって月明かりが水平線を照らし、照らされた月がゆらゆらと揺れている。

なんて贅沢なんだろう。



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