天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
律の気取らないところが好き。

強引なようでそうじゃないところも好き。

"相手なんて誰でも良かった"
なんて言ってた律。

まったくそんな風に女性を扱う姿が想像できない。

ふと初めて会った時の律を思い出した。
私を氷点下の冷たい目で見下ろしたあの顔を。

今だからこそ、あんなに優しいけど最初は確かに凄かったな。

ははは。

すると何曲か弾いて最後の音をポーンと響かせて止まった。
私は顔だけ振り向くと、律は私を見ていて目が合うと微笑んでくれた。

そしてスッと立ち上がると私のところまで来てかがむとチュっとキスが降ってきた。

律はそのまま何を思ったんだか大きい身体で私の上に座った。

「ねぇ、これ違くない?」

「ははは」

思わず私も笑う。

< 202 / 311 >

この作品をシェア

pagetop