天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
結局座り直して、私は律の上に座らせられる。

「やっぱこっちだな」

そう言って笑う律。

「律はいつから私の事好きになったの?」

「ん? わりとすぐだったよ」

「そうなの!?」

「ククククっ。ああ。気づかなかったか?」

「うん…」

律はギューっと私を抱きしめる。

「自覚したのは、お前が兄貴を俺の家に連れてきた日」

「え? そうだったの?」

「ああ。でも初めて会ったあの日俺はもう既に落ちてたのかも。お前が俺に金を叩きつけたあの顔がずっと忘れられなかった」

あー。
あははは。

「気になって仕方なかった」

耳元で落ち着いた声で話す律の低い声が耳に心地良い。

「猫の尻尾でも踏んで怒られたみたいな気になったな。ははは」


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