天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
すると律は弾いていた手を止め私の手を握ってそこにキスを落とした。

「華奢な手だな」

律はそう言って私の手を見て左の薬指をスルっとなぞった。

一瞬ドキっとしてしまう。

見つめ合うだけで何も言葉はない。
律はそのまま立ち上がりポンと私の頭を撫でてソファにゴロンと横になった。

私も椅子から立ち上がってテーブルに座りまたつまみながらお酒を飲む。

「翠」

「ん?」

「好きだよ」

「ふふ。私も」

その日も結局朝まで寝かせてくれなくて、ほぼ寝ないまま念願のダイビングを体験しに行く。

あくびが止まらない。

それでもひとたび海に潜り、綺麗な魚を見れば嫌でもテンションが上がる。

マンタやウミガメが優雅に泳ぐその様はさすがとしか言えない迫力だった。

その後も野生のイルカが近くまで泳いできて一緒に泳いだ。

律も泳ぎが得意なだけあって凄かった。
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