天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


その時奏翔と目が合って、クスッと笑われる。

何か奏翔は察したのかもしれない。

ママがすかさず私の所に来て飛びついてくる。

「やったじゃん翠!」

律との事を知ってるから余計にそんな事を言ったんだろう。

「ふふふ。幸せもらっちゃった」

そう言って笑うと、ママはぽんぽんと頭を撫でてくれた。
なんか泣きそう…。

律は私と結婚する気はないのだろうか。
このままなの?

ついに泣き出してしまう。

皆んなが少し心配そうに様子を伺ってるのがわかった。

「あはは! よっぽど嬉しかったみたいだわ」

丈慈がみんなにそんな事を言ってその場を和ませた。

泣きやめ。
止まれ止まれ!

私はグッと歯を食い縛り笑顔を作ってみんなに顔を見せると、みんなようやく安心した顔をした。

またパーティーが進み終始賑やかにとりおこなわれた。

二人をフラワーシャワーで見送ったあと、そっとパパが寄ってきた。

「翠。喧嘩でもしたか?」

「パパ…」

違う。喧嘩なんてならないもん。
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