天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


「だから違えって。結婚する。昨日春香が帰ってきた」

「えーー!? 嘘っ!?」

ここが執務室だという事も忘れて大声で叫ぶ私。

「それ本当か!?」

丈慈も珍しく驚いている。

「ああ」

「そうか…。良かったな」

丈慈は安心した顔を見せた。
なんだ…
なんだよー。
心配させないでよー。

「翠。泣くな」

大河がティッシュを差し出してくれたので、勢いよく数枚とってチーンと鼻をかむ。

「え、それじゃ、今レジデンスに?」

大河は春香ちゃんがいつか帰ってきたらと丈慈たちの住むレジデンスを購入していた。

「ああ。寝てる」

そう言ってニヤっと笑う大河。
今は朝の9時前。

「寝てる…? あ! 大河! 程々にしなさいよ! まさか朝まで!?」

「まぁ」

「信じらんない! どいつもこいつも!」

そう言って私はプンプンしながら執務室を後にした。
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