天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「大丈夫そ? 奏翔の嫁白目向いたけど」
「そのうち戻ってくるだろ。ブーケトスの時、お前の顔みて誰かいるのかなとは思ってたよ俺」
やっぱりな。
奏翔は人の事よく見てるし。
「んで何でそんな浮かない顔してんだ?」
「それが…」
「だからさ! 何かあったの?」
いつの間にか戻ってきたらしい二人はまた聞いてきた。
「実は、こないだのGWにさ律と旅行に行ってきたの」
うんうんと頷く二人。
「すごいところで、このままプロポーズとかもしかしてされちゃったりなんて勝手に期待しちゃってたものの、何もなくて」
「あら」
二人は声を揃えて同じリアクションを取る。
「え、律さんてさそもそも日本に住んでるの? 世界的ピアニストだよね?」
維織が聞いてくる。
「日本に引っ越してきたの。私の住むマンションの近くに住んでる。たまたまね」
「それじゃ結構会えたりするの?」
美空がお酒を飲みながら聞いてくる。
私は首を横に振った。