天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「予定が合った週末はたまに泊まりに行くけど、ほとんどは平日の夜にご飯だけ食べて終わりかな。今なんてまさにツアー中で各国回ってて日本にいないし」

「忙しいんだね」

「そうなのよ」

「仕事辞めて一緒に住んじゃえば?」

奏翔に言われる。

「それもありだと思ってるんだけど、いかんせん結婚のけの字もないわけよ! まったく!」

私は勢いよくお酒を煽る。

「ははは。でも翠と付き合うくらいなんだから、さぞかし心が広いんだろうな」

そう言って奏翔がニヤっと笑う。

「何よそれ!」

「仕事も仕事だし、好きに動けないだけじゃねぇの?」

「え?」

それは思い浮かばなかった。

「それに、こんなハンサムピアニストが結婚なんてなったら尚更騒がれるだろうし」

「確かに! 今ってどうやって会ってるの!?」

「いや、わりと普通に会ってる。まぁ確かに気は使ってるけど。まずさ、そもそもパッと見わかんないよ。全然ピアノ弾いてる時と雰囲気違うから」

「そうなの?」

「うん。めっちゃ普通のラフな格好した兄ちゃんって感じ」

「想像出来ない! 写真とかないの?」
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