天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そのあとは、ゆっくりと泳いで少し疲れた身体を癒すようにランチをとったあと、スパを体験する。

最高だ。
とにかく最高だ。

なんなのこの至福のひとときは。
白目むきそう。
ついでに口元も緩んでヨダレも出そうだ。

そんな贅沢な時間を満喫して、ディナーをとってお酒を飲み、一緒にお風呂に入って珍しく何もせずに眠りについた律。

疲れてたんだねきっと。

目を閉じた律にそっとキスをする。

そう言えば明日はどこに行くのか聞いてなかったな…

そんな事を思いながら私も夢の中へ入った。

朝日が眩しくて目が覚める。
律を見ればまだ夢の中にいた。

綺麗な顔。
そして私の手を握ったままの大きな手を見る。

いつも綺麗に爪が切られていて、指がとにかく長い。

この指で鍵盤を弾いて音を操るんだもんね。
10本しかないはずなのに次々と音色を奏でるその音は、もはや人間業ではない気がする。

これは魔法の手だ。
私はそっと手を持ち上げてチュッと指にキスをした。

この優しい手で私に触れ、いつも楽園へと連れて行かれる。
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