天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
なかなか取れないはずのチケットも、なんと買えてしまった。

勝手に丈慈の分も買う私。

そしてあっという間に出張の日がやって来る。

パリで仕事を終え、興味の無さそうな丈慈を無理矢理連れ出す。

「なんでだよ。俺クラシックとか聞かねぇんだけど」

「いいから! 大人しくエスコートして」

「面倒くさ」

と言いつつしっかりとドレスアップした私の腰に手を回す丈慈。

そしてワクワクしながら指定席に腰を降ろした。

丈慈はパンフレットを熟読している。

すると間も無くブザーが鳴りオーケストラの団員達がゾロゾロとステージにセットされた席へ着席していき、チューニングを始めた。

みんな外国人だ。

そして、指揮者と共にあの鶴宮 律が颯爽と現れた。




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