天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
私の涙腺はついに壊れた。

みんなどんちゃん騒ぎをする中そっと律に手を引かれて二階へ連れて行かれる。

二階に行ってもなお広いリビングからは賑やかな声が聞こえてくる。

「翠。おいで」

寝室に入るとそう言って手を広げる律の胸に私は飛び込んだ。

「うっ…」

そして優しく包み込むように抱きしめられ頭を撫でられる。

「ちょっと驚かせすぎたか?」

その声はとても優しくて甘くて、温かい。

「嬉しすぎて、涙止まんないよー」

「せっかくだからと思ってみんな呼んだんだ」

「律かこんなサプライズ好きなんて知らなかったー」

泣きながら話す。

「いや俺も」

なんて言ってクスクス笑う律。
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