天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
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朝方目が覚めると、律は早い時間帯にマネージャーの大和さんと思われる人と寝室を出た廊下で電話をしていて、私はベッドにいたけど聞こえてしまった。

「なぁ、また追っかけ来るか? もう引っ越しは勘弁だぞ」

ご立腹な様子だ。

「車内でのキスとか、二股だとかなんなんだよ。翠に迷惑かけたくない」

律はいつだって私を想ってくれている。

「これ以上プライベートを害されて、翠の事を騒ぐようなら、俺は表舞台から下りる事も視野に入れてる」

え!? そんな、だめだよ!

「翠に辛い思いさせてまで表に出なくていい。俺だけならまだしも、翠は違うだろ。ああ。わかってる」

律は必死に私を守ろうとしてくれていた。

そして電話を切って部屋に戻ってきた律はまた私の隣にそっと入ってきて後ろから優しく腕を回して抱きしめて眠りにつこうとしていた。

「律。聞こえたよ」

「翠…ごめん、起こしたか?」

私は首を横に振る。
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