天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「律、ありがとっ! 私は大丈夫だよ? だから律はこれまで通りピアノに集中して?」
「翠…」
「表舞台から下りるなんて言わないで」
律はグッと眉間にシワを寄せた。
そして少しの間のあと律は口を開く。
「それじゃ、せめて結婚したと公表してもいいか?」
「全然いいよ! その方がむしろハッキリして変な憶測も飛ばなくなるでしょ!」
律はやっとシワを戻す。
「そうか…。ありがとうな。大和ともう一度話してみるわ」
「悪い事してないし、私たちらしく今まで通り自然体でいよう?」
律は少し驚いた顔をしてからフッと笑う。
「それもそうだな」
「どんな風に公表してくれても私は大丈夫だから!」
「はは。さすがだな。そんな事言ってたら逆に翠のファンが増えるかもしれないな」
そう言ってギューっと抱きしめてキスをくれた。