天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


俺は翠には言っていないが、既に翠との結婚の意思は固まっていた。
そして、賃貸マンションではなく一軒家が欲しい。

今のマンションは、防音とはいえこれでもやはり周りに気は使う。

なんとなくあまり俺に良い印象がないようにも感じたので、一度ちゃんと会って話したいと思った。

そして後日連絡をすれば以外とスムーズに会える事になったのだ。

「こんにちは。先日ぶりです。忙しいのにお時間取らせてしまってすみません」

俺は今、指定された個室の割烹料理店に来ている。

向かい側に座る翠の親父さんの純平さんが口を開く。

「先日ぶりだな。翠が世話になってるようで。話は聞いていたよ」

いまいち純平さんのクールな表情からは感情が読み取れない。
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