天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい

「妊娠してた!」

「は?」

「妊娠してたの! 律、パパだよ!」

「ほ、本当に…?」

「本当! ギックリ腰で運ばれたんだけど、なんかいろいろ検査されて、そしたら妊娠してた事がわかったの!」

翠はニッコニコで報告する。

「翠!」

俺は嬉しくて翠を強く抱きしめる。

「いッ!」

「あ、ごめ…」

「ふふ。大丈夫。しかもね?」

なんだ?

「一卵性の双子ちゃんでーす!」

一卵性の双子…

双子!?

俺は驚きのあまり声も出ない。

「律? 嬉しくない…の?」

シュンとする翠を見てやっと我に返った。

「なわけ! 嬉しすぎて声出せなかった…。ありがとな翠」

「私こそありがとう」

そして俺はギックリ腰の翠をなるべく優しく引き寄せキスをした。

なんて幸せなんだ。

今翠の腹の中には二つの命があって、確かな家族の絆が見えた気がした。
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