天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そして、ついに息子たちと対面する。

やべぇ。
本当に二人ともそっくりだ。

ひょろひょろで猿みたいだが綺麗に身体を拭かれて水色の服を着せられ並んで眠るその姿に胸が震えた。

「奥さん、よくここまで二人とも平等に大きく育てました。目が覚めたら労いの言葉を送ってあげてくださいね」

「…はい。ありがとうございます」

「抱っこしてみますか?」

「はい」

そして両手に二人を抱く。

可愛いな。
こんなに二人分が重いとは。
翠はあの身体でずっと…

また泣きそうになる。

翠がここまで守ったこの二人の命。
この先は全員まとめて俺が何がなんでも幸せにしてみせると心に強く誓った。

そして次々に頭に音符が嵐のように降り注ぐ。
この感動を音にしたい。

愛おしい翠を想いながら慈しむように二人の息子を抱いて、そのメロディーを脳裏にしっかりと刻み込んだ。
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