天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい

エピローグ

〜翠side〜

「だめー！　危なーい！」

私は二人の息子を両脇に抱える。

双子は凄い。
目が左右にバラバラに動いてんじゃないかってくらい自分の視野の広さに感動する。

キッチンでお昼ご飯を作っていると、一歳になった志音（しおん）と玖音（くおん）が真逆の位置で同じ事をしていた。

面白すぎる。

「どした！？」

私の叫び声を聞いて二階から寝癖を付けたままドタバタと下りてくる律。

「あ！　律おはよー！」

私は二人を両脇に抱えたまま笑顔で振り向く。
二人は手足をバタバタ動かして、ばっばばっばと声を出して律に手を伸ばす。

律はそんな二人を見て優しく微笑むと両腕に抱き抱えた。
こうするとだいたい大人しくなる。

二人でニコニコしながら律の顔をベタベタ触っている。