天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい

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月日は流れ、子供達もすっかり大きくなり今は八歳。

リビングにあるピアノの前に並んで座って連弾をして遊んでいるのか軽快なリズムを奏でながら笑い声が聞こえてきた。

しかもけして八歳とは思えないような見事な演奏を繰り広げている。

そんな風にして私の朝は始まる。

「ん…おはよう」

「はよ…。またやってんな」

リビングから聴こえてくる演奏に私を後ろから抱きしめたままクスクス笑う律。

そして律はそんな私に手を伸ばす。
変わらず律は私を愛でる。

「んっ…、子供たち来るよ?」

「もうちょっとだけ」

そう言って手を止めない律といちゃいちゃしていればピタっとピアノの音が止まった。

まずい。
律とハッと目を合わせる。

律は私の服をすぐに戻す。

「パパ! ママ! 起きて! お腹空いた!」

ふふふ。
大声でそう言って階段を登ってくる。
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