天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい


「愛を奏でたらいいんだよ」

律は両脇に座る二人を見てそう言った。
その顔は慈愛に満ち溢れ、そしてより一層優しい音色となり私の胸に届き震わせた。

私はまた知らずに涙が出てしまう。
律に奏でられているのは私かのような錯覚をしてしまうほどに。

「ママ泣いてる!」
「大変だ!」

私は慌てて涙を拭いて笑った。
すると二人の天使は私のところまで来る。

「大丈夫よ。幸せの涙だから」

二人を抱き寄せると子供たちはギューっと抱きしめてくれる。
律に似て優しい。

そんな愛おしい二人を抱きしめながら律を見ると、律も立ち上がりゆっくりと階段を登ってきた。

そして私にひとつキスをすると私達三人を丸ごと抱きしめた。

「愛してる」

そう言って。






ーENDー

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