天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
クソ。
集中できやしねぇ。

するといつの間に入ってきたのかマネージャーの大和(やまと)が声をかけてきた。

こいつは俺の幼馴染。

「おいおい。ひでぇな」

「うるせぇ。用がないなら出てけよ」

俺はそのままピアノを弾く。

「ははは。これが世界的ピアニストの音か?」

わかってるよ。
俺は無視して弾き続ける。

いくらか落ち着いてきた頃、大和が再び口を開いた。

「日本での拠点、決まったぞ」

「本当か?」

俺はようやく手を止め大和を見る。

「ああ。良かったな」

「そうか…。日本に。ありがとな」

「礼なんていらない」

そう言って大和はフッと笑うと部屋を出て行った。

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