天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「はは。そういう事か。君は確かピアニストの鶴宮…」

なんなんだ?
この男の妙な落ち着きは。

「律。鶴宮 律だ」

俺はとりあえず名乗る。

「俺は神楽丈慈。パリでは素晴らしいピアノコンツェルトでしたよ。君は日本に住んでいるのか?」

「いや、まぁ…」

まだ二日目だけどな。
なんか調子狂うな。

「俺をパリで見たんだな? 他の女といた所を」

ニヤっと神楽丈慈は笑う。
なんだコイツ。

「ああ。コンサート会場の路上でさっきとは別の女とキスをしていただろう?」

神楽丈慈は目を大きく開けたあと声をあげて笑い出した。

何がおかしい?

「ははは、そうか。見られていたか。クククク、あの女が気になるか?」

なんて言って前に腕を組んだまま笑っている。



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