天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
そんな事をするくらいなら黙って俺の…

いや違うか。
何を考えているんだ俺は。
どうかしてしまったのか?

あんな一度ぶつかっただけの追っかけの女相手に…
何を熱くなっているのだろう。

そんな事を思いながらマンションに帰った。

ここはタワーマンションの最上階。

グランドピアノとベッドだけのガランとしてまだ何もない部屋に一人窓際に立ち、陽が沈む様子を眺める。

そしてピアノの前に座り夕陽を浴びながら静かに鍵盤を弾いて、行き場のない気持ちを落ち着かせた。

まだ次の公演までは時間がある。
いろいろ買い揃えたい所だがあいにくこっちの事は全くわからない。

一緒について来たマネージャーの大和も俺と同じで日本には詳しくないし。

祖父母に頼るにはさすがに県外で遠すぎる。

困ったな…。

車もまだ届くまで少しかかる。

まぁ、ピアノが弾けて寝れればいいか。
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