天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい

再会

〜翠side〜

つ、疲れた…。
今日は珍しく外回りの仕事で、ヒールのまま歩き回ったせいで足がパンパンだ。

ワイヤレスのイヤホンですっかりお馴染みとなった鶴宮　律のピアノを聴きながらなんとか歩道橋を登った。

もう真っ暗じゃん。

月を見上げ、イヤホンから流れるピアノを聴きながら一度休憩する。

こんな事になるなら丈慈に言われた通りタクシーで帰ればよかったー。

歩道橋を降りたらタクシーを捕まえよう。
もう初乗り料金で申し訳ないとか言ってられん。

しっかし良い演奏するよねこの人本当に。

あんな最低ヤローのくせに。

もう私の中での鶴宮　律の性格は最低ヤローになっている。

その時風が吹いて髪の毛がバサっと舞い上がり、慌てて髪を耳にかけた。

するとその拍子にイヤホンがポロっと取れてなんと歩道橋の上から車がバンバン走っている道路に落ちてしまった。