天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「おい。待てよ。足、怪我してるんじゃないのか?」

するといつの間に立ち上がったのか、そう言って私の前に立って見下ろしている。

「べ、別に」

すると何を思ったんだか、鶴宮 律は私の前に背中を向けてしゃがんだ。

「乗れ」

「え…?」

「乗れって。下まで運ぶから」

「え、いや…それはさすがに…」

「早く。目立つから」

そう言われて周りを見ると、通りすがりに見られていた。
騒がれても困るか。

「す、すみません。し、失礼します」

私は諦めて大人しくいう事を聞く。

「ん」

そして私のバッグを持っておんぶをして歩き出す。

「なぁ。名前は?」

「翠」

「漢字は?」

「翡翠の翠」

「ふぅーん。あの時なんでわざとぶつかってきたんだ?」
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