天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
とりあえず行き先を告げるとタクシーは私の住むマンションまで向かう。

初乗り料金なだけあって速攻で着いてしまった。

「ちょっとだけ待ってて下さい」

律は運転手にそう告げると車から降りてまたしゃがんだ。

「す、すみません」

エントランスを潜る。

「キー」

「あ、はい」

ガサゴソとバッグからキーを出して律に渡すと、そのキーでロックを解除した。

「何階?」

どうやら部屋までおぶってくれるらしい。

「16階」

律はエレベーターに乗ると言われた通り16階のボタンを押した。

そして到着して扉が開くと律は歩き出す。

「どっち?」

「あっち。1番端っこ」

私の部屋がある方を指差す。

部屋の前まで来るとさっきのキーでドアを開けて、玄関を開けて中に入るとゆっくりと下ろされた。

「それじゃ」

「あ、ありがとう」

「ちゃんと消毒するんだぞ」

「う、うん」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

そう言って律は出て行った。
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