天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「この車凄いね」

なんて言ってキョロキョロしていれば、律が覆い被さってきて一瞬驚いたがシートベルトだった。

びっくりした。

「シート好きに調整して」

「あ、うん」

確かにめっちゃ90度みたいな角度だったからそう言ってもらえて助かった。
最後誰乗ったんだよ。

「向こうでは割とメジャー」

あ、この車?

「へぇ」

「翠、俺、冷蔵庫とか洗濯機とか買いたいんだけど」

「本当に何もないんだ?」

「ない」

「ふふふ。それじゃ家電からだね!」

「ん」

そして電気屋に案内して、並んで店内を見て回る。
律はまだフードを被ったままだ。

「翠はどれ使ってるんだ?」

私はぐるっと見渡す。

「あ、あれ! 調子いいよ!」

そう言ってドラム洗濯機を指差す。

「これね、遠隔で操作できるの。洗剤も自動投入だし、乾燥もあんまりシワにならないよ!」

「フッは。そうか。店員なれそうだな」

「使ってるから分かるだけ!」

「はいはい。デカい声出すな」
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