天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
「将生、気持ちはありがたいけど、ごめんなさい。将生には私なんかよりもっと良い人が現れるわよ。さよなら」
そう言って、彼の返事もろくに聞かないまま私は部屋を後にした。
そしてその後も何度か連絡が来たけど、その度に丁重にお断りをしてなんとか納得してくれたのか、パタリと連絡は来なくなった。
もう29だよ私。
なんか焦るわー。
こんなに出逢わないもんか?
声をかけてくる人はこぞってハズレばかりだし。
というか、見た目で言ったら兄たちを上回る人なんてそうそういない。
将生はその辺わりと良かったけど、束縛っぽいしなんか自分本位な感じだし、好きになれなかった。