天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい

なんかアレンジまで加えて凄いことになってるぞ。

「はは！　凄い凄い！」

「こんなんとか」

そう言えば、急にテンポがジャズっぽくなった。

「キャー！　ジャズだ！」

「これは？」

長調から短調になって何やら怪しい雲行きの曲に大変身した。

「くらっ！」

「ははは。やっぱりこっちだな」

そしてまた長調に戻って軽快に鍵盤を流れるように弾いていく。

「歌える？」

「え、やだよ」

「いいからいいから」

まぁ別にもったいぶる事もないか。
そして鼻歌程度に歌い出した。

「おお。歌うま。ちゃんと歌ってよ」

「勘弁してよー」

「ははは」

こんなに楽しいのは久しぶりだ。

昔、幼い頃に仁くんの奥さんの南さんが日本に来た時なんかはこうしてピアノを弾いてくれて、その横で私たちは歌ったり踊ったりとキャーキャー騒いでた。

懐かしいな。

律が弾き終わってスッと立ち上がった。