天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
肩と肩が触れ合っていたのがなくなり、何故か寂しいと私の肩が言っている気がしたが無視して私も立ち上がった。
その時踵に痛みが走る。
「いっ…」
律が気づいて私の前に屈んだ。
「靴下脱いで」
「あ、うん」
そっと脱ぐと、絆創膏がいつの間にか捲れて剥がれてしまったようだ。
「こんな足で…。ごめんな。たくさん歩かせたもんな」
律は申し訳なさそうな顔をする。
「大丈夫大丈夫!」
私はぶんぶんと手を振る。
「ありがとな。確か絆創膏…」
そう言って目の前で財布をパカっと開ける律。
あ…
私は見てはいけないものを見てしまう。
正方形の小さな袋。
そして律と目が合う。
見た?
と言ってるような顔だ。
私は何も反応しないでいると、律は何もなかったように財布をしまった。
まぁ、大人の男性のエチケットですよね。