天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
しかもまさか隣りであんなピアノの演奏を聴かせてくれるなんて。

私の涙を見たあとの、あの超絶技巧の演奏は凄かった。
でも律は全然ダメと言っていた。

素人の私には分からないけど、なぜかあの気迫に圧倒された。

その後の即興も見事だった。
あの手から繰り広げられる音色に心が弾んだ。


なんか凄い人と知り合っちゃったな。

律は今夜からちゃんとベッドで寝れるかな。
ふふふ。

選んだ枕でどんな夢を見るのだろうか。

もう片方の枕には誰が眠るのだろうか…
財布に入っていたアレも。

誰かそういう事をする相手がいるんだよねきっと。

なんでか胸が締め付けられる。
なんで?

シャワーも全て終わった私は、絆創膏を貼りながら彼の手から伝わった体温を思い出してため息をひとつついた。
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