天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
誤魔化すように翠の好きな曲を教えてもらい即興で演奏してみせれば、翠に笑顔が戻ってそれは楽しそうに隣で聴いてくれた。

こういう時、ピアノをしていて良かったと思う。
コンクールやリサイタルももちろん好きだけど、自由に楽しく遊ぶのも実は好きだ。

歌えと言えば、軽く歌い出したのにめちゃくちゃ上手かったし。
思わず笑ってしまう。

俺の母親にも聴かせたいくらいだ。
もったいない。

でも、こんな翠を知ってるのはきっと限られてるはずだしな。
それを見られただけでも良いよな。

そしてあっという間に楽しい時間は終わってしまう。

何故かこれ以上ここにいたら変な気を起こしそうで俺は立ち上がり送ってやろうかとした時、翠が痛そうに表情を歪めた。



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