天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
家に帰ってクローゼットを開ける。

んー?

クローゼットの前でドレスと睨めっこだ。

あんまり派手じゃない方が無難かな?
意外とホールって冷房きいてて寒いよね。

そして私はひとつのドレスを手に取った。

ブラックでボートネックになっていて肩は出ているが長袖のタイトなデザインで左脚には大きくスリットが入ったそんなドレス。

これでいいや。

黒の胸の下まである髪は大きめに巻いて掻き上げるように分け、片側に寄せる。

メイクはドレスに合わせていつもよりはしっかりと仕上げていく。
最後にボルドーの深い赤のリップを塗る。

こんなもんか。

そしてタクシーで会場であるホールへと向かった。

うわ。
もの凄い人だな。

てか一人で来るのなんて私くらいじゃないの?

コツコツとヒールを鳴らして颯爽と人の間をくぐっていく。

みんな避けてくれるわ。
ありがとねー。

なんて心の中でお礼を言いながら会場へと入った。
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