天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
迎えに来るという律に、少し離れた所で待っててもらう。

あ、いた。

そしてその場所まで向かって歩き出せば、スッと一人の男性に道を塞がれた。

え?

私は顔を上げる。

「将生?」

なんでここに?

「翠。俺、やっぱりお前が好きなんだ」

いや、勘弁してよ。

「また俺と遊んでくれよ」

ジリっと近付かれ私は後退りする。

「お前が他の奴を思ってても、俺我慢するし」

「は? 我慢て何?」

「だから前みたいにさ」

ダメだこりゃ。

「将生。そういう問題じゃないのよ。私とあなたは合わないの」

私はもうはっきり言う。

「合わない? そんな事ないだろ」

「将生。本当に無理なの。諦めて」

「なんでだよ! 俺の事好きだっただろ?」

いや、一言もそんな事言った事ないし。
あんまり大きな声出さないでくれー。
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