天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
なんで!?

なんで帰っちゃう!?

なんかあの横顔怒ってなかったか!?

「ちょっと! 丈慈! あの車追いかけて!」

「は?」

「早く!」

丈慈は軽く舌打ちして車を走らせる。
だがもう既に律の車はいなくなっていた。

「いねぇわ。電話すれば?」

「もう!」

私はもう諦めて律に電話する。

『はい』

あ、出た。

「律? 何で行っちゃった!? いたよね!?」

もう丈慈の前だろうがなんでもいいわ。

『いや…、お前そっちの男と用事あるんじゃないのか?』

「ないない! わけわかんない奴に絡まれてた所を助けてもらっただけ!」

『そいつの事…』

「そいつ? 丈慈の事!?」

『あ、ああ』

「これ、私の兄!」

『兄貴?』

「めっちゃ兄貴!」

『は?』

「え?」

『お前さあ…。とりあえず切るわ』

そう言って切られた。

「切られた…。切られたよ!」
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