天才ピアニストは愛しい彼女を奏でたい
私はギロっと丈慈を睨む。

「あー。俺やっちゃった?」

「丈慈の馬鹿!」

私はバシバシ叩く。

「なんか勘違いしてるよ!? 何で!?」

「あー。俺のせいかも…」

「はぁ?」

「律って、鶴宮 律だろ?」

「…うん」

「俺、あいつと会ったんだ前に」

「は?」

「天音といた所で、話しかけられて」

「律から?」

なんで?

「ああ。お前、知り合いだったのか?」

「知り合いっていうか…。前に初めて日本公演あった時にたまたまぶつかって」

「それだけ? パリでは?」

「パリ? その時はまだ何も?」

どういう事?
ちんぷんかんぷんもいいところだ。

「お前、パリでまつ毛入ったろ? それ取ってるの見られてたんだよ」

「それで?」

「いや、なんかそれでキスしてると思ったらしい」

「は?」

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